いろんな女たちがいるということ 2021年の女性芸人と『浜の朝日の嘘つきどもと』

みなさんこんばんは。12/22のぽっぽアドベントを担当しますurokogumoです。

ぽっぽアドベントの参加は今回で3回目。

毎年12月はこのアドベントで毎日ワクワクしています。

ちなみに私は2019年はハイローの轟について書きました。

2020年は轟を演じた前田公輝さんの写真集、Spotify番組『OVER THE SUN』、Netflixドラマ『保健教師アン・ウニョン』について書きました。

さて、今年のテーマは「私の望みの歓びよ」

私の2021年ですが、引き続きコロナ下で人に会う機会が制限され、ハイローの動きもなく、じゃあ何をしていたかなと考えるとノグボナーラをよく食べていました

正式名スパイシーノグボナーラは韓国のインスタント麺でタヌキのキャラクターが目印のノグリの派生品です。ノグリ+カルボナーラ=ノグボナーラ。映画『パラサイト』を見てチャパグリが食べたくなり、ノグリと間違えて購入したことがきっかけでしたが海鮮のコクと辛さ、ジャンクなチーズ味がたまらず、すっかり夢中になり見かけてはまとめ買いしています。韓国インスタント麺はお湯を入れて3分以上かかるものが多いけど、麺がもちもちで、辛さにも奥行きがあり、レンジで作るものが多いのも面白いなと思います。今のところ竹輪、もやしと一緒に煮て、万能ねぎ、フライドオニオン、卵黄をトッピングするのが一番好きな食べ方です。冷凍のシーフードミックスを入れてももちろん美味しいです。韓国ドラマでよくみる蓋をアイスのコーンのよう丸めてれんげ代わりにするのは熱すぎてできませんでしたが、インスタント麺片手に友だちとオンラインで深夜までおしゃべりするのは大変愉快でした。

*ノグボナーラはかなり辛い商品のため、苦手な人は気をつけてください。

 

さて私の歓びは、女性芸人の活躍です。
今年は『トゲアリトゲナシトゲトゲ』『ぼる塾のいいじゃないキッチン』(2021年9月「ぼる塾の煩悩ごはん」からリニューアル)『キョコロヒー』と女性芸人が中心の番組が一気にスタートとしたことがとても嬉しかったです。

特に「キョコロヒー」の日向坂46齊藤京子とヒコロヒーという組み合わせは少し前であれば、アイドルと女性芸人で対立演出にされそうだったものが、かといって和気藹々するわけでもなく、法事のときにしか会わない年の近い叔母(ヒコロヒー)と姪(齋藤京子)のようで(叔母は姪がお茶うけのチータラを全部食べようとしているのを喫煙所から見ている)(もしくはクラスが違う帰宅部でごくたまに一緒に帰るような仲)親密でなければ不仲とされる、属性が違うと対立関係にされる、かつてのテレビのどちらでもなく、女二人の凸凹したトークを展開していく様がすごく面白いし、見ていて嬉しいなと感じます。

 

女性芸人でいえばもう1つ、今年のベスト映画『浜の朝日の嘘つきどもと』のオアシズ・大久保さんが素晴らしかったです。

映画やドラマの女性芸人はテレビのキャラクターの延長を演じていることや姉御肌的なキャラ、イケメンと組み合わせという企画ものが多い印象でした。(『地獄でなぜ悪い』の友近、『犬猿』のニッチェ・江上、『福福荘の福ちゃん』森三中の大島さんのような作品もありますが)

『浜の朝日の嘘つきどもと』あらすじ

南相馬市に実在する映画館・朝日座。閉館を決意する支配人・森田(柳家喬太郎)の前に茂木莉子と名乗る若い女性(高畑充希)が突然現れる。経営を立て直すために東京からきたというが、閉館の意向を変えるつもりはないと森田は追い返そうとする。茂木はある人との約束できたと食い下がり・・・というお話。

大久保さんが演じるのは茂木莉子(本名:浜野あさひ)の高校時代の数学教師 田中茉莉子先生。あさひが放課後、学校の屋上で思いつめているところに声をかけ、何を聞くわけでもなく「一緒に映画でも見よう」と誘ったことをきっかけに二人の交流は始まる。

やがてあさひは転校し、転校先の学校に馴染めず退学。家にも居づらくなり、茉莉子先生の家を訪ね、そこからふたりの同居生活が始まる。

茉莉子「フィルムの半分は暗闇。だから映画好きには根暗が多いのかもね」

引用元:映画『浜の朝日の嘘つきどもと』本編台詞

茉莉子先生はあさひに何があったか聞かず、親にきちんと連絡させた上で自分の家に住まわせる。そして学校の放課後の頃と同じように一緒にお菓子やご飯を食べながらいろんな映画を見る(私はこの映画のフードシーンがどれも好きなのだが、特にあさひが初めて茉莉子先生の家を訪ねた時、茉莉子先生がお茶でもお菓子でもなくパナップとスプーンを「はい」と渡すシーンがたまらなく好きだ)生徒からの信頼も熱い優秀な教師でもある茉莉子先生だが、男にはだらしなくフラれては『喜劇 女の泣きどころ』を見ながらやけ食いをする。でもまたボーイフレンドができるとあさひにお金を渡して外泊してもらい、合間であさひの勉強も見る。

そんなある日の夜、あさひは自分の家族が震災後どのように壊れていったか初めて胸の内を吐露する。その時、茉莉子先生がキッチン越しにあさひを見つめる目はとても真剣だった。その後、2人はバッティングセンターに行き、茉莉子先生はバットを構えながら自分が自分の家族からどのように逃れてきたかをさらりと話す。

二人の楽しい同居生活はやがて終わりを迎え、あさひはすっかり映画好きになって配給会社に就職するがそこに茉莉子先生が病に倒れたという知らせが入る。あさひは病院に駆けつけ、茉莉子先生から「お願いがある」「南相馬市にある朝日座という映画館を立て直してほしい」と頼まれる。

 

私はこの映画を見るすこし前に『我は、おばさん』(岡田育著)を読んだので「こんなに早く素敵なおばさん映画が見られるなんて!」とちょっと感動した。

縦でも横でもなく「斜め」の位置から子供に関わるおばさんは、親でないからこそ、親でさえ過剰と感じるようなことをしてあげたくなるものだ。後先考えず、損得感情抜きに、身勝手に。親ではない誰かから与えられたものが、少女たちにとって実用性を超えた心の「お守り」になると信じて、かつて自分が追い求めていたものを、上乗せして贈ってやるものなのである。

引用元:岡田育著『我は、おばさん』より

茉莉子先生はあさひに縦でも横でもなく「斜め」から関わるおばさんだった。血のつながらないおばから受け取ったものが宿ったあさひの顔からはかつての心もとなさは消えていた。

大久保さんが演じるからこそ出る、茉莉子先生の大人としての責任感の強さ、程よい距離であさひに接するドライさ、男に対しての甘さ、嘘のない優しさと達観。

「浜野!垢抜けたね!きれいになった」
久々にあさひと再会した茉莉子先生から明るく発せられたその台詞に、今までいろんな場面で助けてくれた年上の女性たちの顔が重なって、私はちょっと泣いてしまった。

 

テレビや映画のなかの女性たちは属性は同じだけど別の生き物だと思っていた。
自分と似た人なんて見つからなかったし、自分よりはるかに細くて綺麗な人が見た目を揶揄されているのを見るたび辛い気持ちになり、自分とは程遠いものや望んでいないものが女のスタンダードのように定義されてることにも違和感があった。
そのなかでいろんな体型の女たちがいる女性芸人に私はずっと心を寄せていたと思う。彼女たちがコンプレックスを背負い投げして笑いに変えて場の主役になる様はかっこよくて心のなかでいつも拍手を贈っていた。でも女性芸人がパートナーがいないことを嘆き、アイドルや女性アナウンサーに噛みつき、イケメンを有り難がる役割に徹する様は見ていてずっとモヤモヤしていた。

2021年はその構造がどんどん壊されていくのを目撃しているような1年だった。現実が『夢で逢えたら』(吉川トリコ著)の続きのような世界になっていると思う。今年のTHE Wは女叩きネタもほぼなく、みな性別関係なくのびのびとワールドを展開していて去年以上に熱い大会だったし、何より全員かっこよかった。

いろんな女たちが当たり前のようにいて、好きなことをのびのびやっている。

そんな女性芸人の景色に私は希望を感じる。

 

さて明日12/23はrucoさんです!それではみなさん良いクリスマスを。